
Kiva
共同創業者兼CEO(最高経営責任者) マット・フラネリー 氏
米国のベンチャー企業・TiVo,Inc.でプログラマーとして働きながら、2004年後半にKivaのプロジェクトを始
める。2005年10月、28歳の時に、妻のジェシカと二人でNPO法人Kivaを設立、同時にTiVoを退職。この時
Kivaは、世界で初めてインターネット上でのマイクロファイナンス(小口金融)を実現する。その後、世界中か
ら数百万ドルもの貸し付けが途上国の起業家に対して行われるオンラインサービスに育て上げ、2009年11月
には貸付総額が1億ドルを突破(約90億円)。2010年3月現在で、貸付総額1億2600万ドル、ローンを受けた途
上国の起業家31万7千人、返済率98.46%を記録している。2009年にはアショカ・フェローに選出。スタン
フォード大学卒業、分析哲学修士。
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- Kivaについて説明して頂けますか。
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Kivaとは小口でお金の貸し借りができるウェブサイトの事で、貧困状態にある人々がそこから脱却できるよ
うにする事を目的にしています。インターネットと銀行口座があれば、カンボジアやタイ、ウガンダやブルガ
リアなど世界中の人々にお金を貸すことが出来ます。そのお金を元に、貧困層の人たちは自分で事業を始め、
約1年ほどでビジネスを軌道に乗せた後、元本を返済するという流れです。
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- Kivaの事業を始めたとき、世界中に広める構想を持っていましたか。
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持っていませんでした。最初はとてもシンプルな事をしていました。アフリカのウガンダという国で、私は妻
と一緒に7人の貧困状態にいる方々を助け出そうとしました。その手段がマイクロファイナンスです。最初か
らKivaの構想を持っていた訳ではなく、始まりは彼ら7人の生活を向上させるという目的だけでした。
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- Googleやyahooなど、世界の中でも最先端の企業がKivaに協力をしています。どのように協力関係を
- 築いたのですか。
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主な理由としては、それらの企業は事業を通じて世の中に好影響を及ぼしたいと考えているからです。そこで
Kivaの働きが彼らのニーズと一致しました。なぜなら、僕らは同じインターネットというツールを活用してビ
ジネスを展開しているからです。我々はGoogleを代表する企業と相互に関係があり、私たち自身もビジョン
や手段が似通っていると感じていました。私たちはただ違う市場を目指しているだけでした。
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それに加えて、地理的な面にも恵まれていました。私たちは多くの人脈ネットワークを共有しているので、例
えば、Kivaの社員の中には過去にGoogleやe-bay、facebookなどで働いていた人もいるし、その繋がりでそ
ういった企業からKivaに遊びに来てくれる人も大勢います。つまり、協力関係を築く前に、従業員間でネット
ワークがあったことが、現在の企業間提携に繋がっていると考えています。
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不正が無いお金の流れの『見える化』を地球の反対側で
- Kivaを運営する上で、難しい点を教えて頂けますか。
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時と場合によって様々な困難があります。難しい事の一つとしては、世界中にKivaの存在を知らせること、そ
して我々のウェブサイトにユーザーを集めることです。もう一つの大きな問題は、詐欺などの不正行為と戦う
こと。我々は会計や決算の仕組みが完成されていない国の人々に対してアプローチをしなければいけません。
日本やアメリカほどお金周りの仕組みが上手く機能している国は世界中にはまだまだ少ないので、我々はそう
いった国々に対しても、財務会計における透明性を運び込まなければならないのです。この不正が無いお金の
流れの『見える化』を地球の反対側で、しかも途上国で実現することは非常に難しいことです。ここに不正の
機会が存在するため、我々は創業以来、悪戦苦闘を続けています。
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- 今後、事業体としてどのように自立を実現させる予定ですか?
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私たちが考える自立の定義とは、我々の収益が事業運営する上でのコストを超えること。2007年度は、収益
が170万ドルで、コストが190万ドル。つまり事業体としての自立にかなり近づいてきていると考えていま
す。現在は、人々がKivaを通じて融資をする時に、融資総額の10%の寄付をKivaにお願いしており、それが
主な収益源になっています。有り難いことに、平均して8割の方々が寄付に応じてくれています。
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それに加えて、私たちは貸付をして頂いている方々のお金を管理することで、運用益や利子を得ています。
もしあなたがお金を誰かに貸す時、そのお金は時を経て返済されますが、しばらくはあなたの口座に留まるか
もしれません。その間、私たちはそのお金を預かり、5%ほどの利子を得ます。これからKivaを通して運用す
るお金が増えれば増えるほど、私たちに入る利益も増えていくはずです。
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- Kivaのシステムは革新的で完璧に近いと思いますが、どうお考えですか。
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完璧なものなどこの世に存在しません。私たちは所詮人間です。
例えば、我々のウェブサイトからお金を盗もうとする人もいます。残念ながらKivaを通して詐欺にあった方も
いらっしゃいます。マイクロファイナンスは貧困撲滅への解決策ではありません。私が考えるに、人々を貧困
から抜け出させる手法の一つに過ぎません。彼らは信用(credit)以外にも多くのものを必要としています。
水や医療、教育や食べ物などがそうです。マイクロファイナンスを完璧なシステムだと仰る人もいますが、
全く完璧とは言い切れません。時間を費やせば費やすほど、それを痛感します。
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- Person to Personのマイクロファイナンスというアイデアについては如何ですか。
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アイデアに関しては素晴らしいと思います。人は心の奥深くで、誰かのために役に立ちたいという願望があり
ます。誰もが持つそのニーズを満たす仕組みを提供できれば、融資をした100%のお金が途上国の人々に届
くことを伝えられれば、Kivaはとても価値のある存在になれると考えています。
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さらには、写真や動画などを通して、途上国の人々のストーリーを視覚的に伝えること成功すれば、人々は繰
り返しKivaを利用してくれるはずです。完璧とはいえませんが、いいアイデアだと思っています。
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社会の目的のためにビジネスを活用すること
- 昨今の社会起業のムーブメントについてはどうお考えですか?
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素晴らしいことだと思います。私が考えている社会起業の定義は、『ビジネスを手段として、社会変革を実現
すること』ビジネスを目的とするのではなく、社会の目的のためにビジネスを活用すること。それこそがビジ
ネスのあるべき姿だと思います。世の中には、利益の最大化のみを目的としてビジネスに取り組む人々がまだ
まだ多く存在します。しかし、それは持続可能な行為なのでしょうか。もし、私たち皆が目標を変えて、より
良い世の中のためにビジネスを用いることができれば、もっと良い変化を起こせると信じています。ビジネス
は自分だけを豊かにするのではなく、社会全体を豊かにするための最高の手段になるからです。
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- 社会起業家にとって必要な資質は何でしょうか。
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根性だと思います。現状として、ソーシャルビジネスに多くの出資者は集まりません。通常のビジネスの世界
においては、株式の売買を通じて、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などから資金を得ることができ
ます。それにより、スタートアップ時に勢いが生まれるのですが、大抵のソーシャルビジネスではその様な
チャンスは巡ってきません。つまり誰かを頼ることなく、自分自身で道を切り開いていかねばなりません。
不利な状況の中で、常に前進を続けること。何もない状況の中で、目標に至るまで何かを生み出し続けること
がとても重要です。一度利益を生み出し始める、もしくは損益分岐点を越えると、あなたの事業がとても広い
範囲に影響を及ぼしている事を実感できる瞬間がきます。ただ、そこまでが非常に難しいのです。
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もう一点あるとすれば、パートナーシップでしょうか。ソーシャルビジネスに関わる人たちは、互いを信頼
し、パートナーとして行動していかねばなりません。今までの企業体は、互いに競争のみで敵対心を持つこと
ばかりでしたが、社会起業家はお互いを必要とし、社会目的に合った関係を構築していく必要があります。
競争以上に、共生の価値観が重要になってくるはずです。
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- 利益の最大化を目的とせず、なぜ非営利組織を立ち上げようと考えたのですか?
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最初にこのアイデアを思いついたときは、慈善事業としての要素が大きかったし、投資よりも寄付が多く集ま
りました。だから自然とNPOにしたというのが本音です。後になって、ユーザーの方々が私たちをより信頼し
てくれることを発見し、今ではNPOで良かったと思っています。そもそも事業の目的を考えると、我々のユー
ザーはKivaが利益を上げる為にお金を貸与してくれている訳ではありません。利益追求の組織になることは、
貧困者を救いたいというユーザーの寛大な行為を裏切る形にもなりかねないのです。非営利組織として、私を
含め社員の給料などの人件費を隠すことはありませんし、Kivaの財務諸表はホームページで完全に公表してい
ます。株式会社と違って誰か一人が儲けるという事がないからこそ、Kivaに関わる人々の間には『信頼』が生
まれるのです。
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この『信頼』によって、我々は株式会社では考えられない提携も実現しています。例えば、Kivaを通して運用
されるお金に手数料は掛かりません。ユーザーの方が25ドル貸与してくれた場合、そのまま25ドルが途上国
の人々に届くシステムになっています。これはPayPalとの提携関係があってこそ実現可能なシステムなので
す。もし、私たちが営利企業だった場合、このような契約が得れたかどうか定かではありません。このような
提携もあり、Kivaの運営コストは年間で約500万ドルとかなり低い数字を実現できています。
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人を助ける事にワクワクしてもいい
- 社会起業家はその”利他的な”事業内容ゆえに、偽善的に見られるケースが多くあります。
- この点についてはどう思いますか。
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人々は自分を満足させたいがために、人に何かを与えようとします。個人的には、人を助ける事にワクワクし
てもいいと思います。誰かの人生を変えたと言って自慢することも可能です。ただ本質的には、人間は神では
ありませんので、結局は自己満足になるのではないかと思います。西洋人は寄付を多くしますが、利己的な動
機が大きく働いています。社会起業家も同様で、結局は自分自身が満足したいがために、社会変革を求めるの
だと思います。
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私自身に関して言えば、勿論、ウガンダで貧困を目の当たりにし、なんとかしなければという想いもありまし
た。だが一方で、利己的な動機も手伝ってKivaの創業を決めたのも事実です。Kivaを創業する前は、ある会
社で働いていましたが、常に自分を満たせる何かを探していました。もっと世の中にとって重要でありたい、
世界に自分の生きた証を残したいという想いがありました。あまり健全ではないのかもしれませんが、人に必
要とされたいという深いニーズや欠乏感もあって、Kivaの創業に踏み切ることができたのです。
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人のため、社会のために事業をすること。それが利己的な動機でも、自己満足に繋がっても良いと思います。
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- 最後に日本の若者にメッセージを頂けますか。
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日本の方々は恵まれていると思います。世界有数の経済大国を築き、驚くべき創造力を持っていると思いま
す。もし、その創造力を再び発揮し、環境のためになるように、貧しい人々のためになるように動き出せば、
それが結果として日本という国をより豊かにすると思います。お互い頑張りましょう。
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- 本日はお忙しい中、有難う御座いました。
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編集後記
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今までの人生で最も衝撃を受けたビジネスモデル-Kiva-。その創業者のMattは、本当に気さくで飾らない空
気を持っていて、笑顔が素敵な方でした。その革新的な事業モデルから世界中で注目が集まる中、名も無い私
達のインタビューを快く受け入れて下さったMattに、心から感謝をしています。日本からも、Kivaのように
社会に変化を与える事業を生み出していきたい。そう決意を新たにしたインタビューでした。
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Kiva URL : http://www.kiva.org/
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